22.恋人

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「え…っ? うそ、どうしよう。あたし何にも用意してない…」 「いーから。開けてみ…?」 「…。うん」 彼女は困った様にはにかみ、ラッピングを解いた。 「…え」 箱の中身を見て絶句する。 幸子は無言で顔を上げ、しんみりと檜を見つめた。 「…これ。あの時の?」 「うん」 再びネックレスに目を落とし、彼女はハッと何かに気付く素振りを見せた。 「まさかロンドンまで買いに??」 「な訳ねーだろ」 「…。冗談よ」 そう言って肩をすくめる。 「高かったんじゃない…?」 「いや全然…?」 「うそぉ…。だって本場でもあの金額だったから円にすると…」 目を上げて計算しようとするので、檜は彼女の手からネックレスを奪い取り、小さな金具を外した。 「…いーんだよ。値段なんて」 言いながら幸子の首にチェーンを回し、金具を留める。 「だって…」 「なに…?」 鎖骨で光る向日葵に指を触れ、彼女は申し訳無さそうに眉を下げた。 「これの為にバイト。してたんでしょ?」 その言葉に檜は口を結び、ガシガシと頭を掻いた。 「…あのな。そーいうのは言わなくていいから」 「ごめん…」 恥ずかしいのか、檜の顔は真っ赤だ。
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