22.恋人

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「それとも…。嬉しくない?」 「そんな事…っ」 幸子は慌てて頭を振る。 「凄い嬉しいよ…?」 「…ならいーじゃん」 そう言って微笑むと、彼女はありがとうと抱き付いた。 「…ごめんね、あたし。あげるもの何にも無くて」 「ハハっ、何言ってんだよ…?」 「え…?」 「きみの体…。大変美味しく頂きました」 「…っ!! もうっ、えっち!!」 幸子は顔を赤らめ、パシッと檜の肩を叩いた。 それに対してアハハと笑う。 「ありがとう、檜。あたし…大事にするね?」 「おう、そーしてくれ」 言い終えると同時にふぁっと欠伸が漏れた。 「何かホッとしたら急に睡魔が…。今何時だろ?」 「えっとね…。もうすぐ3時だよ」 壁に掛かった時計は3時10分前だった。 「そっか。じゃあもう寝ないと」 隣りの彼女を押し倒し、再びごろんと寝転んだ。 「待って、電気消してない」 「いーよ、このままで」 「え、でも。…ってやだ、なに??」 服の中にゴソゴソ手が入ってくるのを感じ、幸子は咄嗟に身を引いた。 「いや…、もいっかいシようと思って。…だめ?」 「だめ…じゃ、無い…けど。電気…」 言いながら彼女の顔はたちまち真っ赤になる。 「いーから、いーから」 檜はにっこり笑い、布団と共に幸子へと覆いかぶさった。
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