プロローグ

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あたしにはきょうだいがいない。 ずっと一人っ子だった。 学校の友達にはうらやましがられたりもした。 両親、祖父母の愛情を独り占めして一身に受けることができる。 だけど、あたしはそれが恵まれていると感じたことはなかった。 何年か前の、お母さんが一番元気だったときに撮った遺影を抱えながら黒い喪服を着た祖父母の前に座った。 自分の家とは違って畳やテーブル、お茶の急須に至るすべてが高級感にあふれたような雰囲気を出している。 無意識に正座をして背筋を伸ばす。 鋭い眼球で見つめる祖父の顔を見ることができなかった。
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