プロローグ

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「…香澄」 あたしを呼ぶ声だって重々しくて怖い。 「…は、い…」 「わしらはお前の面倒を見る気はない」 あたしはゆっくり視線を祖父の顔に向けた。 こう言われることはわかっていた。 駆け落ちをしたお母さんとお父さん。 お父さんはほかに好きな人ができたって家を出て行って以来、もう10年くらい会っていない。 お母さんはもともと施設出身で親がいない。 そんな中でお母さんの葬式をしてくれたことはすごく感謝している。 だから、あたしの面倒まで見てほしいなんて望まない。 「…高校は、無事卒業できたので、就職をしようかと思っています」 高校を卒業したものの、お母さんの病気が進行して看病が必要だったので就職せずにずっと病院にいた。 これからは就職先を探して、安定した収入を得られるようになったら病院の入院費を返して行こうと思う。
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