第1章

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 部屋の中はクリスマスの飾り付けがしてあり、その中で瑠璃たちの姿が見える。声は聞こえないが、話に花を咲かせている様子だった。  僕は入り口に近づきながら彼の姿を探した。僕の観る所から店内に彼の姿が見えない。    あいつ、またどこかでぶらぶらして遅れてるんじゃないだろうな。  僕がドアに手をかけようとするのと同時にカランと音を立ててレストランのドアが開いた。 「隆二さん、待ってたよ~! 時間どおりだねっ」  頭に飾りを付けた瑠璃が笑顔で招き入れてくれた。  瑠璃と桐香くんでおそろいの羽をつけてドレスを着て女装している。 「やぁ」  しかし、瑠璃といい桐香くんといいこいつらは世間を騙せるほどに細いラインで、まるで少女のようだ。  男を捕まえて少女もなにもないものだが、肌が白く人形のようだと思う。  今年のクリスマスは女性陣の一押しで(何故か瑠璃や桐香くんも参戦したらしい)小洒落たレストランに決まったそうだ。  海倉も流石にフランス料理のディナーコースに最初から酒を煽るわけにもいかず、大人しくしていた。  フランス料理の店とは言え比較的カジュアルなイメージで特に形式ばったこともしない。  彰人達も鶫ももう来ている。今年は随分集まりがいいな。  奥のテーブルに何か広げていたらしくそれを慌てて隠していた。    あ……。 「隆二さんっ!」  よくみるとみんなに何か紙袋のようなものを押し付けられ、慌ててそれをしまいこむ守の姿が見えた。    なんだ、もう来ていたのか。   「先に来ていたのか」 「ええ、時間に余裕あったからね」  いつものにこやかな笑顔。今日も僕のあげたコートを着てきていた。    僕はそのまま守と向かい合わせに席についた。僕が席でくつろぐも、妙にみんなの雰囲気がおかしい。  僕がみんなの方に顔を向けるとみなはよそよそしい素振りをする。 「隆二さんもこの羽頭に飾るっ? だって凄く隆二さん綺麗」  桐香が不意ににこやかに話し掛けると一斉に鶫達が口を抑える。 「……?」 「何すんだよぉ!」 「ば、馬鹿桐香! そんな事言うなよバレるだろっ!」 「何? 鶫、いいじゃんよ~隠さなくったって」 「駄目だって」  何か揉めているようだった。その原因がいまひとつわからない。 「何が……?」  僕が尋ねると、鶫は少しだけ顔をひくりとさせ作り笑いをした。
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