第1章

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 真っ赤なドレスに身を包んだ彼女が大きな羽のついたセンスを振りかざして艶かしく踊った。  しばらく彼女の踊りの世界に店内は盛り上がっていた。 「みなさん! 今日のお客様はラッキー! あるお方がおしのびで私たちのステージに参加してくれます。でも誰かは内緒なのが本人からの強い要望なので残念。気づいてもみなさんの心の中にしまっておいてね! それでは本日のメインイベント~!」  この店のオーナー美幸は知り合いだが、オカマだ。ドレスを揺らし、僕を紹介した。舞台は一瞬僕の出番を待つため静まり返る。  ううっ、嫌だ。  どうして僕がこんな目に。しかしそれも瑠璃の母親のリクエストだ。仕方ない。  昔、まだ心を許していた姉に面白半分にさせられた事があったがそれ以来だ。  くっ、足元がすうすうする。  しかし、こ、これもま、守へのプレゼントのため。  大丈夫だ。ここには瑠璃と瑠璃の母親しか知り合いはいないんだ。  旅の恥はなんとやらというではないか。いや、今旅をしているわけではないが。  僕が舞台に恐る恐る上がるとスポットライトが集中した。  一斉におお~! という歓声が上がる。  どうかあまり盛り上がらないで欲しい。けれど静かになられるのも辛い。  僕は紫のストレートの髪のかつらを被り、紫のラメの入ったアイラインや口紅をつけている。  深いスリットの入った竜の刺繍の白いチャイナドレスを着ていた。  もちろん胸は詰め物である。お化粧も濃い目にしてもらった絶対僕だと思われたくなかった。  しばらく艶かしく少しでも女性らしく見えるように僕はステージで踊りつづけた。  ええい、こうなればもうどうとでもなれ。どうせこちらからはライトで客席も見えない!  美幸には絶対本名を明かすな! と何度も念を押したから、誰も僕がこんなところでこんなドレスで踊るなんて思わないだろう。
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