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『僕は君ではないから価値観が少し違うのかもしれないけれど、僕は他人に高望みしない。他人に期待はしない。他のヤツとは『つながり』が無いからな。』
別に怒った風に言ったわけではない。この口調は昔からだ。物事を捻くれた価値観でしか判断できず、人に忌み嫌われてきた。僕には才能がない。どこに行っても底辺だ。
「その・・・・・・、ごめんなさい。初対面の人にこんな事。」
『全くだ。』
「っ!」
『だけど、いつも運動以外完全無欠な生徒会長様が弱々しいのは何だか良い物を見れた。』
別に弱みを握ったわけでも、皮肉でもない。ただそこには、恥ずかしさと何とも言えない感情が込み上げていそうな彼女の、赤い顔があった。
「とっとりあえずっ話聞いてくれてありがとうっ!」
『別に。』
そっけないだろうか?
僕はイスに座り、本を片手に、文字を読む動作をしていたが実際は読まずに話を聞いていた。僕は昔から、人の言動の揚げ足を取るのが得意だった。そのコツとして、相手の話を良く聞く事が大事なのだ。
「・・・・・・そういえばあなた、名前はなんて言うの?」
『・・・・・・四条河原。』
僕は目を横に向けながら言う。
「そっか四条河原君か。・・・・・・・よろしく。私は五門院・夜葉。」
『よろしくはしない。もう会う事もないからな。』
五門院。は、知っていた。というかおそらくこの町のほとんどの人間が名前を聞いた事ぐらいはあるだろう。五門院はとても有名な名家で、たしか警視総監の名字も五門院だったはずだ。
成績優秀、才色兼備、八方美人でおまけに権力者って、どんだけだよ。
「ええ!?」
『そんなに驚く事か?』
「いや・・・・・・、自慢じゃないけど私って結構人気者だから、てっきり四条河原君も私と友達になるのかなって思ってたんだけど。」
『やだよ面倒くさい。友達なんて要らない。』
いや、実際友達なんて面倒くさいだろう。顔を見て気を使わなくてはならないなんて僕には面倒な事にしか思えないんだけど。
「そっそう・・・・・・・・。」
ええ?なんだよその顔。シュンッとかすんなよ。だから女って嫌いなんだよなぁ。面倒くさいし。はぁ・・・・・・・。
『ま、友達と思いたいなら、別にいいよ。』
「え!?あっありがとう!」
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