第1章

8/21
前へ
/21ページ
次へ
着信音は、しばらく鳴り続けていた。 「あ…電話…出ないと…」 落ち着かない気持ちで、まどかは携帯電話を耳に押しあてた。 「はい…」 『準備、出来てるよね?』 山崎さんの声が聞こえて咄嗟に「…はい」と返事をしてしまう。 『待ってるから』 そう言うと電話は切れてしまった。 行きたくない様な…行った方が良い様な…。 頭の中で、自分と釣り合ってる気がしない-。この言葉が何回も繰り返されている。 戸惑いながらも、まどかは山崎さんの車へと向かった。 「あの……山崎さん。私、やっぱり無理-。」 「まどかちゃん、来てくれたんだね」 山崎さんは助手席のドアを開けると、まどかの手を掴んで車の中へと引っ張り入れた。 「だから、無理だって…言って…」 まどかの目の前には、真剣な顔をした山崎さんが近づいてくる。 「無理じゃない…でしょ?」 山崎さんの言葉に耳まで赤くなったまま、まどかはフリーズしてしまった。 かろうじて声を出した言葉は… 「私を、からかってるの…?」 「……。」 しばらく沈黙した後、山崎さんが口を開いた。 「まどかちゃん、僕は本気だよ。マジで逃さないよ?」 まどかは、うつむいたまま静かになってしまう。 山崎さんは、続けて話はじめた。 「君の本当の魅力が、目に見えるようにしたい。そしたら僕の言葉も信じられるよね?」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加