追想

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ふわふわと不明瞭な意識の中、僕は4月とはいえまだ冷え込む外に出る。 そして白みかかる空を見上げながらいつも見る夢を思い起こす。 あの記憶はきっと、本当に幼い時の記憶。 僕の記憶は壊れてる。 昔のことを思い出そうとするとひどく頭が痛くなるから、あまり長時間昔のことを自分の意志で回想することはできない。それなのに寝るたび寝るたびこの記憶が栓が飛んだように夢に出てくるんだ。 矛盾しているのは、僕が1番よくわかっている。 でもどうしようもないんだ。仕方ないだろう? もはや、あの頃自分がなんて呼ばれていたかさえ思い出せない。 僕の記憶はボロボロになって僕の中にくすぶっているんだ。 おかげでずっと浅い眠りしか取れない日々が続いていた。 僕の目の下は色濃いクマがいつからか占拠しているし、ただでさえ色の白い肌はまたより一層白さを増していく。今生活できていることがもはや奇跡に近いような、そんな状態。 「ティア、団長が呼んでるぞ」 「あぁ、今行くよ」 僕は移動サーカス・グランディアのピエロ、ティア───
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