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鳥のさえずりに合わせて、僕は口笛を吹く。
「ここにいたのか、そろそろ打ち合わせだぞ」
サーカスの仲間が僕をテントに呼び戻しに来る。えっとあいつは確か…ナイフ投げのミザリだったか。ミザリは半ば強引に僕を引きずってテントへと歩き出した。僕を引きずりながらミザリは言う。
「お前、なんでいつもどこか外行って帰ってこないんだよ?」
「…何も言われないから」
移動日以外はこのサーカスには必ず1日1回打ち合わせの時間がある。その時間はメインキャスト全員が1つのテントに集まって意見の交換だったり、翌日の公演内容だったりを決めたりするのだ。だがその打ち合わせの時間は毎日不定期で、朝だったり夜だったりする。だから基本的に自由時間は外でふらついている僕はこうやって誰かが探しにくるのがお決まりだ。
「そもそも自由時間に練習とかしない奴がなんでレギュラーなのかがわからない。お前以外にもたくさん公演に出たい奴らはいるのに」
──それを僕に言うのはお門違いじゃないだろうか。
そう、僕は思ったが口にはしない。
少しミザリに引きずられるがままになっていると、サーカスの中でもひときわ大きなテントにたどり着いた。
「団長、連れてきました」
「ご苦労、ミザリ。じゃあ全員揃ったところで…始めようか」
僕は指定された席にぺたんと座る。
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