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ミザリはどうやら僕のことが気に食わないらしい。まぁ、僕のことを内心よく思っていない人のほうが多いのだろうけど、それを表面に出してくるのはミザリが筆頭だ。そしてこうやって直接僕のことを引き合いに出すのは今日が初めてだ。きっとミザリは今日僕探しに出されたのが相当不満だったに違いない。 「他の控えのメンバーもたくさん練習を積んで、少しでも早く、長く、本番のステージに立とうと必死なんです。こんな生活態度のやつにメインを張られていることに納得しないメンバーだっていると思います。なのにどうして、団長はティアをメインから外さないんですか」 ミザリの口調には怒気が含まれていた。僕は棒つきキャンディを口の中で転がしながらミザリと団長を交互に見やる。打ち合わせに集まったメンバーはこのミザリの意見に思い思いの反応を見せていた。あきれたように苦笑する者、その通りだというような表情を浮かべる者、どうでもよさそうに無表情を貫く者── 少し団長は苦笑してミザリを見た。 「ミザリよぉ」 口を開いたのは団長ではなく団長の隣に座っていたダグラス。彼は一応このサーカス団の副団長で、僕の話し相手でもあった。このサーカス団の中で数えるほどしかいない僕の味方だ。 「そんなこと言うとはお前さん、ここに恋人でもおるんか?」 ミザリは顔を真っ赤にして口ごもる。まさかの恋人発覚。僕も驚いた。 「とっ、とにかく!」 ミザリはざわつくテントの中を鎮めようと必死だ。 「ティアの処遇についてのご一考をお願いします!」 ダグラスはにやにやした顔で僕を見てくる。 まぁ、これ以上面倒事にならないならそれでいいか。
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