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雪兎の誘拐の一件以来オヤジに久々に会う。今日はその後の報告をするために組事務所に集まった。
メンバーはオヤジ、俺、佐竹、小松川、洋次、厳汰・・・・6人が事務所の奥の部屋に顔を突き合わせる。
佐竹と厳汰、洋次は舎弟なのでソファの横に立っている。俺と小松川はオヤジの向かいに腰を下ろした。
上座の真ん中にどっかり座ったオヤジは一声を発する。
「この前の雪兎の件、みんなご苦労だった」
「雪兎さん?どうしたんですか?」
驚いたように小松川が声を上げる。
「先生は部外だったんで言わなかったんだが・・・・正月に俺のが浚(さら)われてね。大騒動だったんだよ」
「そっ・・・・それは大変でしたね。で?無事に奪還できたんですね」
「まぁね。嫌なところに囲われて取引の材料に使われちまったんだ。今度は組をあげて大々的に篠崎潰しに乗り出すことにすることになりそうだ」
「取引ってどこと?」
「それは言わないでおこうかな。そのうちわかる」
「取引で篠崎つぶしを請け負ったんですね」
「”生け捕りにしろ”だとさ。俺たちの倣(なら)いじゃ、玉取って終わりなんだが・・・・末端まで総生け捕りっていう条件なんだ。まったく厄介なもんだ。弾、一発ぶち込めばそれで済むものを・・・・」
「一網打尽にして・・・・警察に売れと・・・ということは相手は”桜の代紋”相手ですか」
「明言は避けておく。自由に想像していい」
「そりゃ、同業だけでなくサツも介入となると・・・・抗争ってわけにはいきませんね」
「もともとウチは勢力を広げるのに抗争なんてしたことはねえ。玉だけとって下は総取りだった。大々的にするとサツや公安にマークされるから、いつも水面下で勝負をつけていたのに・・・・サツに捕まらないように、でも総生け捕りをさせてやるなんて至難の業だ」
「サツの手助けなら捕まらないのでは?」
「弁護士先生・・・・甘いな。奴らは自分たちの目の前で抗争が起きたり、銃ぶっ放せば俺らも一緒にパクるつもりだ。アイツらは自分の手駒で使っておきながら、手駒共々も総取りする肚(はら)だ」
「そりゃ、汚いですね」
「なぁ。汚いと思うだろ、先生」
オヤジは小松川を見てニヤリと嗤った。
「そう云うわけだ。大々的にと言っても内輪に周知するだけだ。奴らとの戦いはあくまでも水面下ということでいく。大事(おおごと)のドンパチなんざできないってこった」
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