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「雪兎さんはどっちにしますか?」
にこやかな笑顔で聞いてくる。
もう口出しはできない。あとは彼らの思いに運命の神様が微笑んでくれるかだ。
「どちらだと思います?」
「黄色い方です」
「当たり!じゃあ、桂斗はどっちだと思いますか?」
「もちろん・・・・・」
涙など見せてはいけない。僕は笑っていなくちゃいけないんだ。
じっくりと桂斗と佐竹さんの決断を待つしかない。
虎太郎も心配しているだろうけど、僕らはただそれを見守ることしかできないのだから。
そこに寝室から虎太郎と桂斗が戻ってきた。
桂斗の顔は少し塞いで見えるけど大丈夫だろうか。
暖かな冬の日差しが降り注ぐ中で佐竹と雪兎が楽しそうにケーキを配っていた。
「これ、桂斗が選んでくれたんだってね。ありがと」
「お前って言ったらモンブランだろ」
「よく覚えててくれたよね。滅多に洋菓子欲しいって言わなかったのに」
「そうだな。どっちかというと和菓子好きだもんな」
「ねぇ、桂斗はどっち?渋皮のと定番のと・・・・」
「もち、定番っしょ」
「佐竹さん、当たり~!」
「楽しそうだな」
オヤジも参戦してくる。さっさと渋皮のモンブランを手にした。
「佐竹さんは甘いの苦手だったよね」
「いえ、この頃はだいぶ食べれますよ。私用にシュークリーム買ってきました」
シュークリームを見て思わず赤面する。
熱を出して佐竹の家に行ったとき、シュークリームのいやらしい夢を見た。
あの時の自分の躰の上に垂らされたカスタードクリームの感覚が甦ったような気がして背中がぞくっとする。
「どうしたの?」
雪兎が訝しげにこちらを覗き込んだ。
「なんでもねぇ///」
「顔赤いけど・・・・・」
「大丈夫だよ」
すると佐竹が助け舟を出してくれる。
「雪兎さんの分のシュークリームも買ってきました。シュークリームもお好きですよね」
「うん、好き」
「そうそう、上から融かしたチョコをかけて食べると更においしいですよ。ぜひ試してみてください」
「へぇ、ホント?佐竹さん詳しいね」
融かしたチョコ・・・・・クリスマスパーティーの夜、酔った佐竹が俺の躰に溶けたチョコレートを垂らして舐めまわされたっけ・・・・・。
ズキンと腰のあたりに疼きが生まれる。
ヘンなことばっかり思い出して躰が勝手に熱くなってくる。
「ごめん、トイレ貸して」
「ああ、うん。廊下行って右ね」
そのまま廊下に飛び出し、トイレに駆け込んだ。
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