第9楽章

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「雪兎さんはどっちにしますか?」 にこやかな笑顔で聞いてくる。 もう口出しはできない。あとは彼らの思いに運命の神様が微笑んでくれるかだ。 「どちらだと思います?」 「黄色い方です」 「当たり!じゃあ、桂斗はどっちだと思いますか?」 「もちろん・・・・・」 涙など見せてはいけない。僕は笑っていなくちゃいけないんだ。 じっくりと桂斗と佐竹さんの決断を待つしかない。 虎太郎も心配しているだろうけど、僕らはただそれを見守ることしかできないのだから。 そこに寝室から虎太郎と桂斗が戻ってきた。 桂斗の顔は少し塞いで見えるけど大丈夫だろうか。 暖かな冬の日差しが降り注ぐ中で佐竹と雪兎が楽しそうにケーキを配っていた。 「これ、桂斗が選んでくれたんだってね。ありがと」 「お前って言ったらモンブランだろ」 「よく覚えててくれたよね。滅多に洋菓子欲しいって言わなかったのに」 「そうだな。どっちかというと和菓子好きだもんな」 「ねぇ、桂斗はどっち?渋皮のと定番のと・・・・」 「もち、定番っしょ」 「佐竹さん、当たり~!」 「楽しそうだな」 オヤジも参戦してくる。さっさと渋皮のモンブランを手にした。 「佐竹さんは甘いの苦手だったよね」 「いえ、この頃はだいぶ食べれますよ。私用にシュークリーム買ってきました」 シュークリームを見て思わず赤面する。 熱を出して佐竹の家に行ったとき、シュークリームのいやらしい夢を見た。 あの時の自分の躰の上に垂らされたカスタードクリームの感覚が甦ったような気がして背中がぞくっとする。 「どうしたの?」 雪兎が訝しげにこちらを覗き込んだ。 「なんでもねぇ///」 「顔赤いけど・・・・・」 「大丈夫だよ」 すると佐竹が助け舟を出してくれる。 「雪兎さんの分のシュークリームも買ってきました。シュークリームもお好きですよね」 「うん、好き」 「そうそう、上から融かしたチョコをかけて食べると更においしいですよ。ぜひ試してみてください」 「へぇ、ホント?佐竹さん詳しいね」 融かしたチョコ・・・・・クリスマスパーティーの夜、酔った佐竹が俺の躰に溶けたチョコレートを垂らして舐めまわされたっけ・・・・・。 ズキンと腰のあたりに疼きが生まれる。 ヘンなことばっかり思い出して躰が勝手に熱くなってくる。 「ごめん、トイレ貸して」 「ああ、うん。廊下行って右ね」 そのまま廊下に飛び出し、トイレに駆け込んだ。
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