第10楽章

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そのままぶっ通し4時限まで爆睡していたらしい。 もう教師も呆れて教室で寝かせておいてくれたようだ。 隆弘に起こされるまでまったく気が付かなかった。 「おい、桂斗。メシ行くぞ」 「えっ?古文じゃねぇの?」 「もう四時限目終わったぞ。2組は数学みたいだったな」 「うそ!数学?ヤベ、わかんないとこあったのに・・・・聞きそびれた」 「お前、数学と理系科目好きだからな。疲れてんのか?やっぱ病気じゃね?」 「いや、病気じゃないと思うけど・・・・確かに疲れはたまってると思うけどさ」 「家業の方・・・・つらいのか?」 「うん。先週、ちょっと山場があって・・・外に出る機会も多かったし」 「無理すんなよ。今日は弁当持ってきたか?」 「いや、購買で買う」 「じゃあ買ってきてやるから、お前先に保健室行ってろよ」 「わりぃ。そんなに具合悪いんじゃないんだけど」 「高校生が疲れた顔してるってよっぽどだろ。俺の好意に甘えとけ」 「あー、サンキュ」 気が重い潜りだからなのか・・・・身体の疲れが取れないのも事実。 スッキリしないのは抜いてねぇからかな・・・・なんて不埒な考えが頭の中をよぎった。 そのままふらふらと保健室に向かう。 午後は体育だ。校庭を覗こうとしたら雪がちらちらしている。 この降りだとマラソンは中止じゃないだろう。まだ走った方がスッキリするのかもしれない。 保健室のドアをノックしてガラガラ引き戸を開ける。 「おっ!雷文クン・・・・って疲れた顔してんなぁ~」 「佐久間先生、声デカッ!静かにしゃべってよ」 「若いのになんなのよぉー!」 「先生は歳いってんのに元気だな」 「歳いってるって失礼なっ!」 「そう云えば佐竹と同級生だっけ・・・・だとすると・・・・三十・・・・」 「こらっ!自称28歳なんだからそういうこと言わない」 「えっ?10歳もサバ読み?」 「ウルサイっ!」 「なに?なんかおうちの仕事、危険なの?」 「気が重い仕事」 「そか・・・・佐竹が助けてくれないの?」 「有能だよ・・・・でも頼ってばっかじゃダメじゃん」 「おっ!いい心がけだ。でもこんなに疲れてるんなら少しは頼りなよ」 「頼りっぱなしは嫌なんだよ。自立したいしさ」 「偉いね」 そう云うと佐久間は頭をガシガシ撫でてくれる。ほんと男っぽい慰め方だな。 でも、女という生き物に少々身構えるこの俺でも好感が持てるのは、こういうサバサバした男っぽい仕草や気質があるからなのかもしれない。
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