第10楽章

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「ここんところで随分成長したね。なんか先生嬉しいよ」 「なんで先生が嬉しがってるんだか」 「君にお願いがあるんだけど・・・・」 「なに?」 「あのさ、佐竹って感情出さないし、不器用だろ。だから・・・・・アイツの事見ててあげてね」 「はぁ?どういうこと?」 「じっと見てるとさ。少しは表情違ってるから・・・・読み取ってやってね」 なんかその言葉にムッとした。 「なんだよ。先生、アイツのこと好きなら告ってみろよ」 「そう云う関係じゃないってば・・・・嫉妬しない!」 「ばかっ・・・・誰が嫉妬なんかするかよ!」 「なに騒いでんだよ・・・教師と生徒が・・・・」 そこに怪訝そうな顔をした隆弘が入ってきた。 「だって、先生が変なこと言うからさ」 「先生も・・・・桂斗あんま元気ないんだからさ~!養護教諭なんだから察してやってくれよ」 「ごめん」 佐久間はしょんぼりして素直に謝った。 「ほれ、メシ買ってきたぞ」 「おっ、サンキュ・・・って今日弁当?弁当なのに購買行ってくれたの?」 「だってお前、ダルそうにしてたからさ」 「悪いな」 「そんなに大声出すくらいなら買ってきてやるんじゃなかった」 「わー、ごめん隆弘!許して~」 そう云いながら抱きついて頬にチューをした。 「うわっ!ヤメロ、桂斗」 「あははは」 こんなふうにじゃれているのも楽しい。でもこの頃伸也たちも颯太も遊んでくれない。メシも一緒に食わなくなったし・・・・淋しい気がする。 アイツらは受験組だから、みんながライバルって感じになっているのかな。それともゆるい俺らを見ているとムカつくとかいう理由だろうか。 こうやって仲間がバラバラになっていくものなのかもしれない。 今日は隆弘とガンプラの話をしながら昼食を済ませた。 オヤジと雪兎はどんな高校生活を送っていたんだろう。 俺と同じ歳に結婚してウチにきたんだよな。 まさか学校内ではエロいことはしてないだろうけど・・・・きっとイチャついていたに違いない。オヤジは、脳みそのほとんどがエロいことで埋め尽くされてる。 自分はそれに比べると普通かな。ダチとじゃれている方が楽しい。
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