第10楽章

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それにしても、佐久間先生がなんか奥歯にものの挟まったようなこと言っていたけれどなんだろう。先生は佐竹が好きなのに、気が付いてもらえなかったっていうことだろうか。 アイツは”男友達みたいな関係”って言ってたけど、先生の方は恋人になりたかったのかもしれない。 そんなことを想いながらモヤモヤした気持ちが晴れなかった。 極寒の中マラソンしたのに、胃がムカムカするような・・・気分は晴れるどころか余計燻ぶったまま俺の中に沈殿していく。 放課後、隆弘は補講に行ってしまった。 俺の足は科学室に向いていく。 今日は颯太と一緒にメシを食ってない。 アイツを脅している奴は誰なのか突き止めないといけない。 科学室のラボの方からカチャカチャと器具のぶつかる音・・・・・颯太は部活に来ているんだ。 良く聴くと話声もする・・・・男の声。こそこそ喋っているので内容はわからない。脅しているんだろうか。 「じゃあ、頼んだぞ」 そう肩を叩く手が見えた。顔は実験器具の入った棚が邪魔になって見えない。 後姿(肩の辺り)はどこかで見たような気がする。ガラガラと化学実験室のドアが開閉して、また沈黙と器具の音だけになった。 「颯太」 「桂斗・・・・」 「今のヤツ・・・・・脅してるやつ?」 「違うよ」 「また変な頼まれごとしてないか?」 「大丈夫、しばらくアイツが来ることなかったから」 「そうか。今頃いつも来るのか?」 「そうだな、だいたい今頃」 「今はもう薬作っていないか?」 「頼まれてはいるけど・・・・効能を強める方法もわかってて・・・・でも怖くてまだ手を付けていない」 「何の薬?」 「媚薬っていうのかな?チョコに入れるタイプとかいろいろ」 「なんだそりゃ」 「ネットとかでいろいろ載ってるのを試作してくれって言われてる」 「・・・・・・・それなら・・・・・大丈夫かな」 「僕もそれならいいかなって引き受けたんだけど」 「もう脅しはないのか」 「うん、レシピ教えてから・・・・・もう言わなくなった」 「レシピ?睡眠薬の?」 「うん。脅して悪かったって・・・・もともと友達だし・・・・」 「えっ?俺たちの仲間の中にいるのか?」 「・・・・・・・・」 颯太ははっとしてカタカタ震えはじめた。これは・・・・本当の事らしい。
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