第10楽章

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「誰かは・・・・・言えないよな」 「うん・・・・・僕からは・・・・・」 「わかった。そいつもまた脅されているのかもしれないし・・・・・俺が当たってみる」 「桂斗、もういいよ。脅されてないし、もう危険な薬を作れって言われてないし」 「そう云うわけにいかねぇ、俺たちの仲間だったらなおさらだ。作り方わかったんなら、量産しているかもしれない。俺が止めなきゃいけない」 「でも桂斗とみんなの関係が崩れちゃうんじゃ・・・・・」 「友達ってのは、悪いことは悪いって言ってやるのが”友達”だろ。それで仲が悪くなることがあっても、そこは言わなきゃ。ソイツが悪いことしてるのを黙って見逃すのは本当の友達って云えないんじゃないか」 「桂斗は強いね。僕ならできない」 「ダチが道踏み外しそうなの黙って見てられないだけだよ」 「そう云うの・・・・尊敬する」 「よせよ、照れるから」 颯太は俯いて小さな声で謝った。 「名前言えなくて・・・・ごめんね」 「それも、お前の優しさだろ?」 「どうかな・・・・もしかしたら僕の保身なのかもしれない」 「そうだとしても、お前を責めたりしないよ」 「本当に男前だな。女の子だったらお前に惚れているところだ」 そうか、普通は『女の子だったら惚れちゃうよ』で終わるのが男同士なんだよな。なんで俺はそこで終わらなかったんだろう。なんで男なのにソイツ(男)が好きって思ってしまったのか・・・・・俺はもともとからホモなのか? それにしてもチョコと聞いたら躰のあちこちがムズムズする。クリスマスのチョコの一件があってからシュークリームとチョコは鬼門なんだ。 俺の中にあるエロい部分がどんどん大きくなる。 「なぁ、チョコに入れる媚薬ってどうやって作るの?一緒に作らねぇ?」 ついつい仕事(ミッション)より興味のある方に行ってしまうのが悪い癖だ。 責任より欲得の方が勝ってしまう。 その日から科学室に入り浸ってチョコに入れる媚薬の製造を颯太に教わった。 媚薬入りチョコ作りは、まずチョコに仕込む媚薬の精製から始める。 試験管やフラスコを手に持ちながら、まるで呪いを込める魔女のようにニヤニヤしながら薬を作った。化学オタクの上に、利害が絡んでいるから楽しくて仕方ない。 健康食品売り場でキャラウェイシードを手に入れて粉末にしたり成分抽出をしてみた。結構たくさんの実を使用したのに成分を抽出できたのはほんの少しだ。
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