第9楽章

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今日の服は何がイイだろう。あまりセンスというものがないから皆目見当がつかない。おしゃれでもないし、服にも興味がなかった。 でも服を気にするなんて・・・・恋の力は偉大なりってところか。 別にかっこよく着飾っても相手が萌えてくれるとは思えないけど・・・・でもみっともなくて一緒にいたくないとかも嫌だし・・・。 コンコン・・・・・ この頃ドアの叩き方で誰が来たかわかるようになってしまった。 佐竹はゆっくり、なんか一つ一つに重みがある低い低音を響かせる。 「坊ちゃんまだですか?」 「あっ・・・・待って。私服なんてあんまり着ないから迷っちゃって」 「ふぅ、まったく」 そう云って鍵を開けて入ってきた。 「バカ!入ってくんなよ」 パンツ一枚の状態で侵入されたので、また両手で胸を隠していた。 なんでだろ?胸ないのに。 「なんでもいいんですよ。別にデートするわけじゃありませんし」 「えっ!デートじゃねぇの?」 アイツの動きがピタッと止まった。 「デートだと思ってたんですか?いつそんなこと言いました」 「学校休んで出かけよう・・・・とかいうから・・・・てっきり」 「なんで坊ちゃんとデートしなきゃいけないんですか」 「・・・・・・・・」 なんだよ。すんごく楽しみにしてたのに・・・・そんなに否定しなくてもいいじゃないか。 「仕事・・・・絡みか?視察とか」 「その点は違います。完全にプライベートですね」 「ふん」 心臓を掴まれるような痛みが襲う。俺だけいつも空回りだ。 確かに片思いだし、相手にしたらただの気分転換でもと思ったんだろうが、俺は昨日からテンションあがりまくりなのに、この温度差はなんだか悔しい。 「そうですね、行く前に服を買いに行きますか」 「またオヤジのブラックカード?」 「ええ、でも今日はかなりプチプラで」 「はぁ?プチ・・・?なんだそりゃ」 「安くてかわいい服買いましょう」 「お前、女子っぽい・・・・気持ち悪い」 「今流行りの言葉を使ってみたんですが・・・・坊ちゃんの方が鈍感でしたね」 「わるかったな。ファッションとか流行りとかに疎いんだよ」 佐竹はとりあえずクローゼットを覗いた。一通り見渡すと、バットマンTシャツに紫のダウンのジャンパー、膝にダメージのあるジーンズをポンと投げてよこした。 そう云えば今日はコイツも私服だ。革ジャンに細身のジーンズ。割と腰回りが細いんだな。ついついケツをじろじろ観察してしまった。
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