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「誰かと買い物するとか・・・・久しぶりだな。クリスマスプレゼント買いに隆弘と行ったとき以来だ」
「隆弘くんって」
「佐々山 隆弘、一番の親友かな。お互いの事一番喋るかもしれない」
「極道ってことも?」
「それは言ってない・・・・捲き込んだらいやだし」
俺は助手席でポップコーンを食べながら行先を見つめていた。十分友達を巻き込んでしまっている。颯太の方も早く解決してやらないといけない。
地方都市の商店街。そこそこ賑わっている通りだった。
佐竹はコインパーキングに車を止めると俺の手を握った。
顔が赤く染まって耳まで熱を帯びる。こんなの反則だろ。デートじゃないって言ったじゃやないか。
一軒のスナックの前まで来ると躊躇なくドアを開けた。
「おい、まだ営業まえ・・・・」
店のママらしき女性(ひと)が振り向く。びっくりしたような顔をした後、満面の笑みを零した。
「桂斗・・・・・?」
「ま・・・・なみ・・・・」
10歳の時に別れたきりの母親・愛美の姿がそこにあった。
「佐竹!どういうことだ」
「坊ちゃんに会っていただきたかったんです」
愛美は近づいてきて頬を両手で包み込む。目にはいっぱい涙を浮かべていた。
「大きくなって・・・・立派になったね」
「そうでもねぇ。まだ半人前だからまだ会うのは先にしておこうと思ったのに」
「ううん、すごい立派だよ。ジャニーズ系みたいでカッコいいし。本当に私の息子なのかしら」
「ほめ過ぎだ」
愛美は店のカウンターに佐竹と俺を招き入れて座るように促した。中で温かい紅茶を淹れてくれる。
感慨深げにこちらを見ながらひとつため息をつく。
「もう7年近いんだね。早いね、時がたつのは・・・・まだほんの子供だったのに・・・・」
「当たり前だ」
「虎太郎くん、元気?」
「虎太郎くんって・・・」
あのオヤジを虎太郎くんって・・・・確かにかなり年下だけど軽い扱いだな。
違和感に戸惑っていると横合いから佐竹が口をはさむ。
「若はお元気ですよ。男盛りと言ったところでしょうか」
「そうよね。何年か前に着物の広告に出てたでしょ。相変わらずモデルみたいで・・・・ほんとイケメンだよね」
母親と何を話していいかわからない。オヤジの事どう思ってんだろう。
単なるコイツの上を通り過ぎた男の一人なんだろうか。
簡単にカッコいいとか話す母親が軽薄に思えて嫌な気分がする。
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