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すごくイライラした。50過ぎてんのに相変わらずの若作りだし、言葉が薄っぺらに感じた。ほんとに頭悪いな・・・この女。俺が頭悪いのもコイツのせいか?
「お前さ、たまたま俺ができたから生んだのか。オヤジの事はこれっぽっちも感情残ってないのかよっ!」
ムカついてつい声が大きくなった。
最初驚いた顔をしたが、俯いて震えはじめた。感情的に大きな声をだしてしまって怯えたのだろうか。極道っぽい声のトーンだったかもしれない。
母親とはいえ、女の扱いは本当によくわからない。
「虎太郎くんのこと・・・・・もちろん好きだったよ。でも彼は中学生で私は30歳超えた落ち気味のクラブママだったんだよ。本当の事なんか言えないじゃない」
「雪兎はまだいなかったんだろ?」
「ううん、もう虎太郎くんの心の中のほとんどを占めてた。わかって付き合ったんだもの、私が大人として応援して、最後は引いてあげないといけないじゃない」
膝に乗せた手がかすかに震えていた。つらい恋だったのかもしれない。
今の俺にはその気持ちがわかる。
「好きな人の子供だったから生みたかったの。雪兎くんにはそう云えなかったけどね」
「当たり前だ。雪兎が傷つく」
「子供がいるってだけでも十分傷つけちゃったし、それ以上虎太郎くんの大事な人にツライこと言えるわけがないじゃない」
「そうか・・・・・」
佐竹は俺たち親子の会話を黙って聞いている。コイツはこんな親子の会話をどう聞いているのだろう。
「俺さ、去年から高校行ながら極道してる」
「うん、佐竹さんから聞いてるよ。組長になったんでしょ」
「名ばかりだけどな」
「若いのにえらいよ。私なんかいい歳しててもフラフラした人生だし」
「ココ、愛美の店か」
「これだって虎太郎くんのプレゼントだよ。自分で何ひとつ出来てない」
暗い話ばかりだったので話を変えてやろうと話題を変えた。あんまり触れたくない話だったけど、愛美についてはこの話しか情報がない。
「今・・・高校生と付き合ってるんだって?」
「うん。とってもいい子なの。この近くに住んでいる子で・・・・桂斗の高校に通ってるんだ」
「えっ?俺の後輩ってこと?」
「うん、アンタと間違えて声かけたのがきっかけでね・・・・」
「本当に・・・・もう少し節操ないのかよ」
本当に呆れる。これが自分の母親だと思うと恥ずかしい気がする。
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