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「こんなの・・・・ねぇよ・・・せっかく会いに来たのに・・・・父親違いの弟いるとか・・・最悪だよっ!」
耐えられなくなって店を飛び出した。
走って走って・・・・車のところまでひたすら走った。
佐竹があとから追いかけてきたが、アイツの方には振り向けない。
とめどなく流れるモノを見られたくなかったから。
佐竹は何も言わずに車のキーを開ける。
顔を上げずに後部座席にもぐりこむと運転席のヘッドに頭を預けた。
「坊ちゃん・・・・余計なことをしたかもしれませんね。スイマセンでした」
「・・・・・・・」
「愛美さんにお子さんがいるとは・・・・今まで知りませんでした。ここに寄らせてもらった時にもお子さんの影もありませんでいたし・・・・」
「もともと・・・・・ああいう女だった。誰の子かもわからないんじゃないかな。冬の寒空でも、炎天下でも・・・男がうちに来る時はオレを追い出すような女だった。どうせ今の高校生だって遊びだろ。そういう無節操な女なんだよ」
「お母さんのことをそんなふうに言ってはいけませんよ」
「お前だってそう思っただろ!アイツはいつだって・・・・子供の事より自分の欲の方を優先する女だったよ。あの女の血をひいてる自分も嫌いでならなかった」
「坊ちゃん・・・・」
「幼稚園くらいの時・・・・何も知らない時は、あんなに大好きだったのにな」
「愛美さんにもいろいろあったんです。今の断片だけ見て評価するのは性急だと思います」
「アイツに会うたびに失望させられる。もう会いたくない・・・・これ以上俺の中の母親を貶(おとし)めたくないんだ」
「わかりました。余計なことをしてしまいました・・・・・申し訳ありません」
「・・・・・・・」
久しぶりに会った母親は相変わらずの放蕩ぶりだった。
もう関わることはないから好きに生きればいい。
だけど弟の件は許せる範囲ではない。
『あなたの弟よ、面倒、宜しくね』
そんな言葉も到底看過できない。
あの奔放でダメ母の血を継いだ俺は・・・・やっぱりダメ人間なんだろうか。
帰ってきてから部屋に籠ったきり夕食も食べなかった。
せっかくのデートだと思ってテンションMAXでいた朝とはまるで正反対だ。
自分のルーツを晒され、根底からぐらぐら揺さぶられた気がする。
何も考えたくない。
厳格な佐竹には、あんな女の子供だと蔑まれるに違いない。
自分自身が穢れているような気がして、寒気がする。
自分のすべてが嫌悪すべきもののようなして息苦しくなる。
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