神様たちの朝

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どうやら喉が渇いていて水を飲みに来たらしいアラシが茶碗で水を飲んでいたら…。 ドドドドドド…! トゲが走って逃げてきた。 「奥方さまっ!?お許し下さい!!!」 蒼白になりながら必死に逃げつつ叫ぶトゲに追いすがるサクヤ姫。 その背後からキーを人差し指でクルクルさせながらのんびりやって来るカノエ太守。 トゲが涙目でサクヤに叫ぶ。 「阿修羅士官学校の制服は軍服でございます! 冠位束帯など着ている学生はおりませんので!!!」 トゲに何とかして冠位束帯を着せようと追い掛けるサクヤ姫も必死だ。 「何を言うのじゃ。 卒業間近に寮を出るとなれば、今までお世話になった寮の方々にきちんとご挨拶させていただかなくては…! 大和の習わしでは、冠位束帯が正装ではないかぇ。 卒業式にはきちんと小物も揃えるからの?とにかく今日は皆様に失礼の無いようにじゃな…?」 「阿修羅士官学校での正装は軍服でございます! わたくしめは軍服を着てまいりますのでっ!!!」 「いや…。そうは申しても…。 やっと留学から帰ってきて一緒に住みながらここから通えるようになったのではないかぇ…。 嬉しいのじゃよ…。 祝わせては貰えぬのかぇ…?」 「いやっ!それは一平の君さまのお陰をもちまして、わたくしめも実に嬉しい限りなのですがっ!!!それとこれとは別物でございます!!!」 「何が別物じゃ。 お世話になった方たちにきちんとご挨拶するなら正装であって然るべきであろう」 「ですからっ!わたくしめども士官生の正装は制服の軍服でございますのでっ!!!」 「黙りゃ。 こんな機会でなくては、トゲは冠位束帯など着てくれぬではないか。 要はそなたが冠位束帯を着ている所が見たいのじゃ。 ほれ。脱げ。脱がぬとならば、吾が男の子の一番大切な物も含めて脱がしてしまうぞょ?」 「そ…そればかりは…!!!」 鬼族のトゲを相手に、むしろ優勢に鬼ごっこするサクヤ姫…。 「臣下たるもの!主の着せ替え人形になるのも勤めの内じゃろっ!? ハァハァ。 ほれ!脱げ!脱がぬかっ!!!」 ドドドドドド…と走り抜けていくトゲとサクヤを見送りつつ、その後ろから黒い革ジャンのヘビメタ・スタイルのカノエがのんびりと。 「お前らも来っか?帰り道、なんか旨いもんでも食って来ようぜ!」
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