神様たちの朝

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「うっわぁぁ──っ!何これ!?これが学校!?」 一平が目の前の阿修羅士官学校の偉容に呆気に取られる。 また、千秋も。 「学校っていうより…軍事基地みたいだね」 戦闘機こそ飛んではいないが、どっかの育ちの良さそうな神子たちが空中戦を繰り広げていたり…。 数有る建物も全て超近代的で巨大でド迫力だ。 そこに、凛と涼やかに勇ましい軍服の青年たち。男子校のようだ。 ちょっと萌える。 ノノもはしゃいで。 「立派な学校だの! トゲ兄ちゃ、スゴいだの!」 自慢気に抱き付いてくるノノに、トゲが思わず照れ笑いで。 「わたくしめは鬼族。 こちらは本来、エリート神族の方の為の学校ですので、わたくしめは特別枠で入っておるのです。 特別生の場合、試験の成績が悪いとスグに落第や退学になってしまいます。 つまりわたくしめは、ここでは補欠みたいなものでございます。 何も大した事はございませんので」 謙遜するトゲに、アラシがニッコリ微笑んで。 「ここ、貴族社会の予備校…みたいになっちゃってるのよね? 私の周りにもここの卒業生が居るから聞いたわ? そんな正規生に対して、特別生は厳しい条件をクリアし続けないと容赦無く切り落とされるから、特別生の方が優秀だって」 「落第や退学など、せっかく入学させていただきましたのに、絶対にできませんので。 ただ必死にやっているだけで、誉めてもらえるような事は何もしておりませんので…」 それでもまだ照れ笑いのトゲ。 すると、ある一団が「トゲくーん!おはよう!」と声を掛けてきた。 だから、カノエがニパッと笑ってトゲに言う。 「諜報学科の友達たちか?」 「あ…。は…はい…。ご…ご紹介いたします…」 その風情を見て、黒い革ジャンのロックスターが、途端に父親の顔になって軽く微笑む。 「いーよ。そういうのは照れくさいもんだ。気にすんな。 それより、ほら。皆が待ってんぞ? 退寮の手続きはしとくから、お前は今日も友達たちと仲良く楽しんで来たら良いさ。 勉強は、そのついでの暇潰しで構わねーかんな?」 カノエに律儀な礼を述べてから、仲間の輪の中に入っていったトゲがとても自然な笑顔を浮かべた。 いつも少年武人として、常に毅然としているトゲなのに。 今だけは、ただの少年。 「あんだよ…。ずいぶん良い顔するようになったじゃねーかよ…」 これだから、父親はやめられない。
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