780人が本棚に入れています
本棚に追加
■大国主神話概略 其の参
【無限に求めて】
○古事記
大国主が出雲国に戻り、いよいよ国造りを始める事にした頃。
彼が美保岬にいた時に、鵝(蛾の誤りとされる)の皮を丸剥ぎにして衣服とする小さな神(幼い神子?)が、海の彼方から天の羅摩船(あめのかがみのふね)に乗って現れた。
大国主はその小さな神に名を尋ねたが、その幼さ故に自らの名も判らないのか答えが無く、従者もその名を知らなかった。
そこにヒキガエルの多邇具久(タニグク)が現れて、「これは久延毘古(クエビコ)なら知っているでしょう」と言った。
クエビコとは、山の田んぼの案山子(カカシ)で、歩行できないが、天下のことは何でも知っている神である。
そのクエビコに尋ねてみると、「その神はカミムスビ(神産巣日神)霊神の御子である少名彦那(スクナビコナ)神である」と答えた。
そこで大国主はその迷子の幼神を連れて、カミムスビ霊神の元へ上がり訊ねてみたところ、カミムスビ霊神は少名彦那(スクナビコナ)を自分の子と認めた。
また、我が子スクナビコナに対して、大国主と一緒に国造りをするように命じた。
神名の始まりの音がオオナムヂの「オオナ=大な」とスクナビコナの「スクナ=少な」の対になっている彼らは、やがて非常に深く親しみ、互いに相手を自らの分身と語るほどの強く結ばれる同朋となった。
周囲の者たちも、大国主と少名彦那を義兄弟神どころか双子神と呼ぶほどの無双のパートナーになった。
そんな大国主と少名彦那は協力して、やがて葦原中国の国造りを行い、見事にこれを平定する偉業を成し遂げる。
しかしその後、大国主と共に育て上げた出雲帝国の成立と安定を見届けた少名彦那は、急に常世(黄泉の国)に去ってしまう。
少名彦那を前触れも無くいきなり失った大国主は「これから一人でどうやって国を造れば良いのだ」と嘆き悲しんだ。
その時、海を照らしてやって来る神がいた。
その神は、「我は汝の幸魂奇魂(さきみたまくしみたま)である。丁重に私を祀れば、国造りに協力しよう」と言った。
どう祀るのかと問うと、大和国の東の山の上に祀るよう答えた。
この神は現在御諸山(三輪山)に鎮座する神(大物主)である。
最初のコメントを投稿しよう!