神様たちの朝

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「こんなの、昨夜のリサイタルに比べたら全然安いもんだよ。 思わず何枚もデッサンさせてもらって…。あんなに充実した仕事、久々だったなぁ…。 そのモデル料だと思ったら、まだまだ足りないよ」 やっぱり、千秋のふんわり笑顔。 野のワラシは二十年の間眠りに就き、人々の涙を地域を災厄から守る結界を張る神の力に変換する。 その過程で野のワラシはゆっくりでも着実に神の力である神通力を徐々に高めていく。 更にカノエとサクヤも神気や才気を眠る彼に注ぎ、バランス良く神格を上げていくように補強・調整をしていく。 しかし、人の子を神にまで育てるとなると、やはり危険だ。 安易に使うには、神通力とは強大過ぎる力だからだ。 神の子として生まれた神子(ミコ)ならば本能で判る神通力を使ってはいけない場面で我慢が出来るように、野のワラシは二十年目の満月の日に目覚め、神通力を安易に使わないトレーニングが課せられ、その代わりに野で遊ばしてもらえる事になっている。そして半月後の新月の日の日没と共に、野のワラシは再び深い眠りに就く。 詳しくはこちらもこれまた畏れ入りますが、前巻をご覧ください。 野のワラシは通常、それを9回~16回ほど繰り返し神へと昇華するのが一般的と言われている。 なので、早くて二百年。平均的には三百年。遅くとも四百年以内には昇華するものとされている。 そこからすると、ノノはもう47回も眠っていて、単純計算で940年…つまり千年近くも野のワラシとして頑張っている。 神の魂と人の魂を半分ずつ宿す半神半人の野のワラシの場合、そんなになかなか昇華できないと本来なら人の魂が先に朽ちてしまって滅んでしまうのだが、ノノは成長は遅くとも根気と根性だけは驚異的な魂で今日まで修行に勤しんでいる。 それはノノがかつてこの地で行われた口減らしの犠牲になった子供たちの哀れな魂たちの集合体が彼の人魂の本性だからかも知れない。 更には、一平が「千年の野のワラシなんて方がまず不自然。カノエさまやサクヤさまに敵意を持つ誰かが、眠るノノくんの夢に入り込んで邪魔していたと考える方が自然」と考察した。 無垢で健気で頑張り屋さんなノノ。 聡明で小悪魔気質でちゃっかり系の一平。 そして二人をふんわり笑顔で見守る千秋は、彼らの良心。 それから、ノノが眠っている間にいろいろ学んだようで、知恵の一平に対して知識も豊富で博識だったりする。
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