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「まずは、遠野御前に挨拶するんだよね?
まぁ良いや。待っててあげる。
ふふふ…。この私を待たせるんだ。
結構大変な事だからね?
それ相応の見返りは要求させてもらうよ?」
無茶苦茶だ。
何やら勝手に気に入って、勝手に同席しておきながら何か要求してくるとか言っている。
非常識極まりない。
だから一平が即座に反論しようとしたが、カノエが咄嗟に制止した。
後に判るが、カノエもサクヤもそれなりに高い地位の神ではあるが、少名彦那は段違いに偉い神様だった。
どのくらい偉いかと言えば、大和神族の絶対君主である女帝アマテラスでさえ彼が司る分野(医薬・農耕・穀物・酒造・まじない・温泉・石…など)に関しては敬意を払い、彼の言葉に従う。
また、黄泉の国の中ならば、彼は治外法権を認められていて、女帝にもその司る分野に関しては黄泉の国の中ならば対等を許される唯一の存在である。
条件付きとは言え、あのアマテラスが対等を許しているなど、他には黄泉の国の中でのオオクニぐらいしか居ない。
まぁ、オオクニの場合は黄泉の国の絶対神なので、黄泉の国の中では対等どころかアマテラスより上位となるのだが。
とにもかくにも、見た目は爽やか好青年で清涼飲料水か何かのCMモデルでもやらせたいくらいの優男だが、実は破格に偉い神様だったのでした。
ニコニコ笑顔で一同を見渡していた少名彦那とノノの視線が重なった。
「うにゅ…。初めましてはご挨拶しないとメッ!だの…」
はい!ノノくん!
いつものお願いします!
「オラは、ノノ!
野のワラシだのっ!」
少しだけ恥ずかしそうな、元気な笑顔でちょっと小首を傾げている。
瞳はダイヤモンドで、黒髪には天使の輪。
少名彦那の瞳孔が開いた。
「ふにゅぅ~?
どうかしただのぉ~?」
少名彦那の呼吸が停止した。
「お兄ちゃま?お兄ちゃま?
もっしもーし……だの…」
少名彦那の整った顔立ちに、一筋の鼻血…。
ノノを見詰めたまま石像のように微動だにしない少名彦那に、ノノが心配になって抱き付いた。
「お兄ちゃま!?どうかしただの!?」
見上げてくるその瞳には、彼を心配する涙がこんもり…。
ガッドォァァァ───ンッッ!!!
何かが暴発したような爆音がした。
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