780人が本棚に入れています
本棚に追加
少名彦那が、愕然とワナワナ震えながら、信じられないものを見るように数歩ヨヨ…と後退しながら呟く。
「お…お兄さんと…お風呂に入らないかい…?」
「ノノくん!離れて!」
一平が即座にノノと少名彦那の間に割って入る。
そのノノを引き継いだ千秋が、腕の中のノノを守るようにしながら少名彦那に。
「一平くんも気を付けて!
一平くんだって美少年なんだから!
変態さんに食べられちゃうよ!」
見事な連携だ。
「食べたきゃ食べれば良い。
その代わり、僕は猛毒だよ?」
すっかり変態さん扱いで敵視されている少名彦那の脇から、嵐丸がやや引きつった笑顔で。
「あ…。いや…。
少名彦那の御本神さまは、いろいろ司っておられててね…?
温泉の神でもあって…。
一応…少名彦那神としては、好意の表れとして普通はご自身で作られた美酒を贈るんだけど…、温泉に誘われるのは、それ以上の最上級の特別な親愛表現なのよね…」
嵐丸は少名彦那のフォローを入れているつもりだが、いまいち説得力に欠ける。
一平と千秋の疑惑の視線を浴びながら、少名彦那はやや平静を取り戻して嵐丸に言う。
「嵐丸くん。
いちいち御本神とか大仰に呼ばなくても良いよ。
君は正一位の神格を持つ上に、私の一等神なんだから。言わば分身であり嫡男みたいなもんなんだから。
ちょっと他の少名彦那の名を与えている子たちには無理だけど、嵐丸くんになら特別に私を“スクナ”って呼んで良いよ。
一応、この世界中で私をそう呼ぶのは、今までオオナの兄者にしか許さなかったけどね」
「そんな…。畏れ多いです…」
「私が許可したんだ。
私の言葉は、許しの言葉さえ遮る事は禁じるから。
君は私が許した通りに感謝すれば良いんだよ」
柔和なのに、どこか高圧的。
にじみ出る、隠しきれないほどに高貴極め、崇められる為の存在。
そんな少名彦那、スクナが再びノノに向かって華やかで親しみやすい笑顔を浮かべながら。
「ノノくんたちは、実に興味深い。
いずれ嵐丸くんの主君筋になる立場なら、出血大サービスだ。君たちにも、スクナの略称を許そう。
ノノくんの可愛らしさも奇跡的だけどさ?一平くんと言うのかい?君もなかなか面白いね。
それから、そこの人の子。
千秋くんと言うのかい。
君が特に興味深い。まだ自分の本当の能力に気付いていないようだね」
最初のコメントを投稿しよう!