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そこでスクナが嵐丸に。
「オオナ兄者の神子で私の正嫡筋の宿り神だもん。
普通なら、コネで裏口から入学したのかと噂されるかもだよ?
これで君が医神として凡庸なら、間違いなくいじめられちゃうよね?
だから、嵐丸くんは他の医学生たちより格段に優れていないと、きっと潰されちゃう。
他の医学生たちと同じじゃ足らないんだよね。最初から優秀で当然。他の子より強い後ろ楯の代わりに、君本人には高い能力が求められるの。
じゃないと、私も君に合格判定は出せないよね。
君はもう私の特別なんだから、他の者たちより優れていないと許されないんだ。誰より私が許さないしね。
自ら医神になりたいと願って、両親がそんな君に用意した最高のスタートラインなんだよ?
そのスタートラインがどんなに高い場所に有ろうが、そこに登ってくるくらいは自分の力でね?
でないと私は、神の誉れとされる一位一等の宿り神を迎えておきながら、早々に差し戻すなんていう神としては大恥をかく事になるし。
君も神としての将来を失う事になっちゃうからね?
頑張ってね?応援してるよ?
応援だけね?
でないと裏口とか不正入学とか言われちゃうし。
やっぱり、嫌でしょ?」
嵐丸が途端に緊張の表情をする。
「そ…それはまた…急ですね…。
もう少し心の準備をさせていただいてからではいけませんか…?」
嵐丸の言い分も、試験を受ける立場ならもっともなのだが…。
スクナが「はぁ?」と呆れてから。
「君ね。なに言ってんの?
急患が心の準備を待って運ばれて来るとでも思ってるわけ?
手術中に患者さんが心肺停止になったら、それから医学書を開いて適切な処置を調べられるとでも思ってるわけ?
なに?君、医学なめてんの?
命や運命は待ってくれないんだ。それに挑む仕事なんだよ?
その責任の重さとか厳しさとか覚悟できてたら、絶対に出てこない言葉だよね。
甘いな。
ボンボン育ちの甘ちゃんだ。
まるで話にならないよ。
君には命を預けられない。
これは不合格かな。
判ってる?
両性神の君を男神の私の神籍に入れる為に、君を男神同等とする手続きに私がどれだけ方々に手を尽くしたか。
君にはそれだけの価値が有ると思ったからだったのに…。
おかしいな。私の見立てがハズレるだなんて、滅多に無いのに…」
「すすす…すみませんっ!!!
受けます!
受けさせて下さいっ!!!」
嵐丸が慌てて叫んだ。
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