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そのやり取りを聞いていた神様ファミリーの三兄弟が、小声でヒソヒソと囁き合う。
「スクナのお兄ちゃま、優しそうだのに…時々怖いかもだの…」
千秋がノノの言葉に頷きながら、スクナを見詰めて頬に少し緊張の気配を帯びさせつつ。
「きっと、優しいから厳しくもなるんだろうね。
中途半端とか『ま、いっか』とか許されないお仕事だし。
もし俺が患者だったら、そんなお医者さんが居たら怖くて診てもらえないよ。
だから、厳しくもなるんだろうね。
甘さは優しさではないんだね」
そう言う千秋の言葉を聞いた一平が少し眉を潜めながら。
「でもさぁ…?スクナさまのさっきの言い回しで、ちょっと気になるトコが有るんだよね…」
「気になるトコ?」
千秋が反芻する横で、ノノも「ふにゅ?」と可愛く小首を傾げる。
「うん。
ほら。医学生ってだけでも普通は優秀でしょ?医学部に入学できるくらいの学力が有るって事なんだから」
「そうだよね。
それも常世中央医学院に合格するくらいの医学生って言ったら、医神としたらそれだけで将来を約束されてるようなもんだよね。
そんな医学生たちの中でも更に優秀でないとダメだなんて…。
大丈夫かな…?嵐丸くん…」
「まぁ、それだけ聞いたらこれ以上無いくらいにハードル高いよね…。
でもさ…?スクナさま、『他の者たちより優秀でないと』とか『高い能力』とか…そういう言葉を使ってたんだよね…」
そんな一平に、千秋が怪訝な表情で問う。
「え…?だから…大変なんじゃないかって心配してるんだけど…?」
「うん…。僕の気のせいかも知れないんだけどさ…?」
「うん」
「スクナさま、一度も『学力』って言葉を言わなかったんだよ。まるでワザと避けてるみたいにさ?」
「あぁ…。そう言えば…そうだったかな…?
でも、それがどうしたの?
嵐丸くんが医学生として最初から高いレベルを求められてる事には変わらないんじゃない?」
「遠野御前さまが言ってた。知識はこれから授けていただくとしても…って。
試験したいのは、嵐丸くんの医神としての才能って事を言ってた。
もし…スクナさまが嵐丸くんに求めている合格ラインが高い学力ではないなら…」
一平が少し眩しそうな表情になってスクナを見詰めて。
「それって…、物凄く難しい試験になってくる…。
試験を受ける方にとっても、合否判定する方にとってもね」
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