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実は一平と千秋の会話が聞こえていた嵐丸。
なんか、気合いスイッチが入った。
それまでは戸惑う可憐な少女のようだったのに、途端に毅然と姿勢を正して座り直した。
「宿親神たるスクナさま直々のご査定とは、一位一等の枝を預かる者といたしまして、まさに誉れであり望む所でございます。
実に有り難く、身の引き締まる思いでございます。
斯(カ)くなる上は、どうぞご存分にご審査いただき、スクナさまにご満足いただくまでです。
よろしくお願い申し上げます」
急変した嵐丸の風情に、スクナが少し「おや…?」と驚いたが、すぐに笑みを浮かべて。
「君は性別だけじゃなく、内面にも二面性が有るんだね?
普段は乙女のような風情なのに、ここぞと言う場面では屈しないで雄々しくさえなる。
聞いたよ?自爆の玉から生き残ったんだってね?
目前に突き付けられた確実な死を体験しながら、それを奇跡的に回避した生きる執念。
それだけでも中々なのに、君は怖がったり逆に復讐に燃えたりせず、それどころか、母親や自分が殺されそうになって、だからこそ、その真逆の生かす力を望んだ。
だから、なんだよ。
永きに亘り、誰にも与えようと思えなかった、私に一番近い一等の宿り神の地位。
神としたらさ?一等の枝神を持つってだけでも栄誉なのに…。
それが、やっとだ。
しかもその子が、まさか正一位の神格に叙せられるなんてさ?
一位一等の宿り神を持つ…。
神族として、これ以上の栄誉はちょっと無いかもね。
追い詰められ、逆境に際して屈しない強い心。
痛め付けられても、戦う事より守る力を求めた君の意思。
そんな君を、高天原の天つ神々が正一位の格に相応しいと認めた。
私の枝神として、申し分無いよ。
悪いけど、君には思いっきり期待しちゃってるからね?
ビシビシいくけど、付いてきてね?
でも、君って追い詰められると母親似なんだね。
顔も母親似だけど。
ちっとも強そうじゃないのに、イザという時には威厳を放つと言うか…何か逆らいがたい風格みたいな…?
そこは嫌だな。母親に瓜二つだ。
直してもらえない?」
「……は?」
「いや。だからさ?
私、君の母親…っていうかオオナ兄者の妃たちなんて本当は全員皆殺しにしたいし出来るし。薬殺とかさ。
でも、医神としてなら患者は救う対象だからやんないけど。
基本的に兄者の妃たちは、全員私にとっては敵だから」
「……………は?」
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