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それからしばらくは、嵐丸が遠野御前に問診したりしながら神気を診たり、スクナと何やら専門用語で話したりしていて、他の者たちにはよく判らなかった。
が、しばらくして嵐丸が出した診断は遠野御前にも判るようにと判りやすい言葉で語られた。
「母上の神気に有る病んだ気は、蠱毒などの霊気を蝕む毒でも、呪いや祈祷やまじないなどの邪念によるものでも無いようです。
どちらの形跡も、全く見当たりません。ですから医神たちも原因を見付けられず、私たちは途方に暮れてしまいました。
私など、刺客にまで身を落とすほどに愚かな真似まで…」
そう言う嵐丸に遠野御前が静かな口調で返す。
「どのお医者さまも判らなかった私の病の原因…。
貴方に見付けられまして?」
「スクナさまの助言が大きかった…というかスクナさまに答えまで導いていただいた気がします。
どうもスクナさまは、母上の病の原因を一目で見抜いておられたような気がします」
「さすがですわね。
で?私の病はどうなのかしら?
毒でも邪念でもないなら…、他に何が原因なのかしら?」
「はい。母上が鎮まれるこの社、しかも母上の神器が納められている舎殿の周囲の土をお調べください。
社が聖域なのは、祀られている神の神気が漂うからです。つまり、聖域の社の気と祀られている神は連動しています。
今回の病の原因は、母上の神気を直接侵したものではなく、社の気を害して母上が病むように仕組まれたものであるはずです。
母上の神気をわずかばかり採気して調べましたら、嫌な臭いが混ざっておりました。
スクナさまが仰有るには、人族がよく使う油で、ガソリンと呼ばれるものの臭いだろうという事です」
「ガソリン…?」
「はい。
非常に燃えやすい油で、独特の強い臭いを発するものだそうです。
また、特に燃える時に出る排気ガスというものが神気を弱めるそうなんですが、燃える以前の揮発した気も、排気ガスほどではないにしても、大和神族の神気を打ち消す働きが有るそうです」
「まぁ…」
「それを神器が納められている舎殿の付近に撒かれて、連動している母上の神気に影響を及ぼして、体調を崩す原因になったみたいです。
ただ…。これは神族には難しい…。
大和神族はガソリンに近付く事も危険ですし…。
もしかしたら、人族の共犯が居る可能性も有り得るかと」
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