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ノノが愕然とするのを見て、嵐丸が安心させるように薄く微笑みながら話し掛ける。
「まだそうなるとは限らないわ?
あくまで可能性の話だから。
慌てなくても大丈夫よ?」
そう言う嵐丸の横で、一平がため息混じりにポツリと…。
「まぁ…。たいてい、こういう悪い予想に限って当たっちゃうもんなんだけどね…」
「はにゃっ!?
やっぱりピンチだのっ!?」
一平の呟きに、ノノが真っ青になってアタフタする。
そんな面々を見渡して、千秋が少し目を伏せて静かな声で。
「そんなの、ダメに決まってるじゃないか」
フッと上げた彼の瞳には、怒りに似た闘志の光。
「やる事なす事、迷惑どころか悪事ばかり…。
この黒幕…、よく今まで野放しにされてたもんだよね…。
俺も人族だ。それも生身の人間だ。
サクヤさまに御加護をいただいている神に親しむ人間だ。
神と人の絆を断ち切られるなんて許せない。
そうなるとは限らないなんて悠長に構えてられるもんか。
神族に対して人族が圧倒的に優位に立てるものが周知の事実になってしまったら…、悲しいけど神を支配しようとする人間が出てこないとは言い切れない…。
いや…、たぶん…出てくる。
それに神々が神通力で対抗したら、いずれは神々と人々の大戦争になっていくしかなくなる…。
人族の俺が言うのも変だけど…。
人族がこの世の主導権を握るのは危険だと思う。
神々と穏やかに共存してきた今までのバランスが最善だと思う」
千秋の意見に、嵐丸が。
「それならワクチンを開発すれば良いと思うわ?現世からの影響の中で、ある一定の悪影響を弱めたり無効化するような」
すると、一平が驚いて。
「そんな都合の良いワクチンなんて開発できんの!?」
「簡単には出来ないけどね。
……普通に研究してたら無理ね」
「普通じゃ無理なら…、普通じゃない方法なら…開発できんの!?」
嵐丸にかじりつく勢いで一平が訊ねるから、嵐丸が少しだけ黒い笑みを浮かべながら返事をする。
「医術は、ある意味では運命との葛藤の産物よね。
つまり、運命を司る月の大法官さまにとって、医神たちは目の上のタンコブなのよね…。
逆に…私たち医神にとっても、大法官さまは…。
今現在、大法官さまが秘蔵なさっている“パンドラの箱”の力を用いる事ができれば…あるいはね」
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