first

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と、不意に顔を上げた(多分)プーが、ここに来てようやくハッキリとした言動に戻る。 その言葉が……、 「お礼をしに行こう!」 「はぁ?」 人間化してたらきっと、いい事を思いついた様な、満面の笑みを浮かべていたに違いない。明るめのトーンで、プーは続ける。 「クノさんには色々お世話になったから、何かお礼をしようと思うんだ」 ボクもいろんな意味でお礼したい。 「迷惑じゃなければ、何かプレゼントがいいかな」 顔面に一発プレゼント。 「よし! 決まり!」 キメてやりたい。 それどころじゃない。『よし』と同時にストレンジ(人間化)したプーは、意気揚々とした足取りでスタスタと歩き始める。 ボクのことは完全にシカトだ。 こういう時、プーは結構人の話を聞かない。普段はそうは見えないけど、自分の意志で決めたら中々譲らない、頑固な部分がある。 こうなったらボクの話も、簡単には聞き入れない。 「おい、何が『よし』だよ全然良くないよアンタ。たかがダンスでお礼参りだって?」 「お礼参りじゃなくてお礼だよ。すごく楽しかったし、ボクのためにあれこれやってくれたの嬉しかったから、このまま黙ってるのって申し訳ないと思うんだ」 心なしか饒舌になっている。完全にやる気だ。 どうにも、コイツの妙に律儀な部分が気に食わないボクとしては、この展開は本当に気に入らない。 このままではボクは、玲賀のことがどんどん嫌いになっていく。ちくしょう、今度会ったら噛み付いてやりたい……! 大体、ここ最近ボクだけ露骨に運がない気がする。 変なガキンチョにはやたらと追い掛け回されるし、この間は兄弟ぐるみで捕獲してきた。 奢るって言うからついて行ったのに、ガキンチョの相手をするのは聞いていないぞ、あの兄め……。 そういう訳で、ボクは今、最高につまらない。 End.
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