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※再びプチイベネタで単発
※準備編
「この状態でどれくらいいける?」
ノーヴァの屋敷の自室で、少年とも少女とも取れる背格好の人物が一人、何かの感覚を確かめるように振る舞いながら、どこかに言葉を投げ掛けた。
『体力の消耗にもよるけど、能力を使うともっと難しくなるかも……。この状態を維持するだけなら3日、かな……』
試したことはないけど、と問い掛けに不安げな答えを返した声はプレシェンシアのものだ。しかしその姿は部屋の何処にも見つけることはできない。
一人仁王立ちする人物は、鮮やかな薄い青髪を雑に掻くと、気だるそうに白のスーツを整える。
短いズボンに黒のタイツとブーツで揃えた足元を軽く動かす姿は、プレシェンシアが稀に人間の形を取る時に発動する『ストレンジ』の状態によく似ていた。
しかしいつもの温和な表情とは異なり、不機嫌そうな鋭い目付きで自身の映った鏡を睨んでいる。
「分が悪いね。連れが居る時は解いて、一人の時はこのままで行く。一人って言うか『二人』だけど」
開いた口から出た声はプレシェンシアではなく、リドリーのものだった。無論、いつもの兎のぬいぐるみの姿は影も形もない。
今、人の姿を成しているのはプレシェンシアではなく『リドリー』だ。
本来、人間化する『ストレンジ』という能力はプレシェンシアのもので、リドリーは単身で人間化することはできない。
ところがそこに上書きする形で『同化』すると、その人間体の主導権をリドリーが握ることができる……というトリックを使って、彼(彼女)は人の形を取っている。
二人が同じ魂を共用しているからこそできる現象であって、リドリーが人間化するにはプレシェンシアと『同化』する以外の術はない。
この状態は、二人がノーヴァで戦闘員として仕事をこなす時、自分達(特にリドリー)では手に負えない相手を対処する際に見せることがある。
戦闘能力を上げると共に、同化していることでプレシェンシアしか使えない『赤いリボン』をリドリーも使用することができる。
二人で一つの人間として戦うのが、この二人の本来の戦闘スタイルだ。
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