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実際、この二人の戦闘能力の差は凄まじいもので、リドリーはぬいぐるみの状態でも自在に動き、敵を翻弄させて噛み付いたり炎を吹き出して戦うことができる。
一方プレシェンシアは、自身の血から生んだリボンを扱えるとはいえ、素早い動きに追い付けず、本人の優柔不断さから相手を追撃することができないという欠点を持つ。
戦闘能力の補助の効果も勿論だが、戦いが始まって、どこから襲撃されるか分からない中でプレシェンシアのフォローをしながら戦うより、二人で行動した方が勝手がいいというのも、今回リドリーが人間化した理由だった。
「で、ノーヴァのメンバーには手間掛けるけど、ボクらはなるべく聖堂区には近付かずに、ノーヴァの守りを固める事に専念する。敵陣のど真ん中で『ストレンジ(人間化)』が維持できなくなったら死んだものと思った方がいい。
ノーヴァの敷地内なら誰かしら味方が居るだろうから、なるべく……最低二人くらいで行動する。無駄に消耗したくないから、余計な追撃は入れない。
癪だけど連戦と奇襲のことも考えて、スキがあったら『ストレンジ』を解く。その間、オマエはできるだけ体力温存。絶対戦うな。そして、ボクから離れるな」
矢継ぎ早に述べると、リドリーは折り畳み式のナイフをしまった。消耗して能力が使えなくなった時の予備だ。
人間化の維持はすべて、プレシェンシアの気力と体力に掛かっている。例えリドリー自身が消耗していなくても、プレシェンシアが力尽きればその時点で人間化が解けてしまう。
いつ終わりが見えるか分からないノーヴァとシュヴァルツの戦い。プレシェンシアがどこまで持つかが、二人の命運を握っていた。
『ごめんね』
「何が『ごめん』なの。逆にこれ、オマエの身体なのにボクが好きに使ってるんだよ。それはボクの台詞だ」
弱々しく響く相棒の声を聞いて、リドリーは準備の手を止めた。
『ボクが、こんな姿じゃなくて、もっと戦えたら』
「いいよ、そういうの。別にウザイとか思ってないから」
強めの口調で言葉を遮る。ぶっきらぼうだが、頭を掻き毟りながら『首』は答えた。
「オマエは戦えなくてもいい。でもそれが嫌なら、戦えるようになりたいって思ってもいいよ。ただ、」
「ただ、ボクの見ていない所で死ぬのは止めてくれよ、って話」
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