第3話

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「……まだ帰ってなかったんですか」 「勝手に帰るのもどうかと思って」 「勝手に部屋を物色するのもどうかと思いますけど」 「1本もらったよ」 「もらう前に言って下さい。そういうことは」 「うん。ごめんね」 「……」 冷蔵庫に入っていたはずのミネラルウォーターのペットボトルを手に、ベッド脇の壁に寄りかかり、いつも見る人懐っこい笑顔で私を見下ろす神崎さん。 いつもの彼と違うのは、ゆるいパーマの髪が濡れていることと、昨日のワイシャツを着た胸元がはだけていること。 「用が済んだならお帰り下さい」 「まだ済んでないから帰れないんだ」 「……」 無視する訳にもいかないから会話してあげたっていうのに。 人が寝ている隙に勝手に風呂に入り、勝手に冷蔵庫を漁り。更に何をするつもりなんだろう。この人は。
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