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ズザッ――
ズザ――
床と足裏が擦れ合うような音が壁越しに聞こえてくる。
誰かがゆっくりと歩いているようなその足音が、
また今日も彼女の部屋に響いてきた。
「い、いや……お願い来ないで……」
一人暮らしの凍てつく空気が漂うこの部屋へ向かってくる、
ただただ繰り返される何者かの足音。
彼女は蹲るように
ベッドに身を伏せていることしかできなかった。
ズザッ――
ズザ――
ゆっくり、ゆっくりとその音は徐々に大きくなってきている。
確実に彼女の部屋へと近づいてきている。
ズザッ――
ズザ――
ズザッ――
その音は彼女の部屋の前で足を止めた。
「い、いや……っ!」
彼女は怯え、その先にいる足音の姿を
ドア越しにただ見つめていることしかできなかった。
「お、お願い……許して……お姉ちゃん」
ガチャッ――
怯えている彼女を見透かしているかのように、
ドアノブはゆっくりと捻られた。
そして、静かにドアが開かれる。
彼女を暗い世界へと誘い込もうとしているかのように。
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