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「ぐおー。がごー。ぐおー。がごー」
怪物のような寝息は
その小さな建物の外までも響き渡ってきた。
「全く。堕落探偵のイビキ、
外までまる聞こえだよ。勘弁して欲しいね」
霧島響哉(キリシマ キョウヤ)は夕景のなか、
オレンジ色に染まる建物を見上げながら呟いた。
冬の凍えた空気へと、
霧島は白い溜息を吐き出した。
端整な顔立ちだが、
どこか嫌味たらしい目付きをしており、
そんな眼差しを眼鏡で隠している。
そんな青年だった。
建物の2階へ通じる階段の入り口には
小さな看板が立て掛けられており、
「乙黒探偵事務所」と書かれてある。
「そんじゃま。あの寝道楽化け物を起こしますか」
ぽつりと溢すように呟き、
霧島は狭い階段を上って行った。
掃除など行き渡っていないであろう
ゴミが散乱する階段を慎重に上っていく。
その先にあるガタがきている扉、
そこに再び「乙黒探偵事務所」の看板があった。
床とドアが擦れるキーッという音を鳴らしながら。
霧島はその鍵の掛かっていない扉をゆっくりと開けた。
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