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そして、乙黒は杏子に向かって告げた。
「高崎杏子、
よく見ろよ。
この部屋を。
ここはアンタの部屋
『アパート202号室』
ではない」
乙黒は一句一句を強調するように告げた。
「え……」
動揺する杏子は気を張り詰め、
自らが今、存在するこの部屋を見渡してみた。
姉・柚子と共有した沢山のモノが散乱している、
6年前と何ら変わらないこの部屋。
そう、
ここは確かに
『杏子の実家である高崎家』の
『杏子と柚子の部屋』であった。
「ど、どうして……!?
私、アパート202号室で寝ていたはず……!?」
「ああ、そうだ。
アンタが『寝た』のは確かにアパートだ。
だがアンタは寝たあとに、
無意識下のうちに自らの足で
この『柚子さんとの部屋』まで
帰ってきていたんだよ」
「え……っ?」
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