お喋りな木

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「はぁっやっと…着いた!!」 校門から屋上を見上げると人影が見えた。 「ヤバいっ!!」 俺はガタガタと震える足に鞭打って屋上へと駆け出す。 何でなんだ? 普通木が話したくらいで死のうとするか? 確かにトチ狂ったか?とは思うかもしれないがそれでいきなり自殺だなんて突飛すぎる!! 「はぁ、はぁ…はぁ!っ!!」 屋上へと続く階段を一気に登り、そのままの勢いでドアを開ける。 「な、何!?」 女の子の驚いたような焦ったような声が聞こえ、そちらを向くとフェンスの向こうに立つ子がいた。 「てめぇ、何してやがる!」 思わず低い声で怒鳴ってしまった。 ヤバいヤバい、こういう場合は相手を刺激しないようにしなきゃなんねぇのに…! 「こ、来ないで!!それ以上近づいてきたら私…飛び降りるからっ」 「わわわわかったから!!だから落ち着け!」 「私は落ち着いてるわ!!」 そう言って女の子は半歩下がって胸に右手を当て胸をはった。 …半歩下がって? 「へ…?きゃぁあー!!」 そりゃあそんな狭い場所で動いたら落ちるだろ!! 「んのド阿呆ー!!」 っ………!! 「まに、会った…」 流石俺! 間一髪で女の子の右手を掴めた俺は渾身の力で引き上げる。 「た、助かったの?私…」 軽く放心状態の女の子。 「おま、馬鹿なんじゃねえの!?」 思わず怒鳴ってしまったのもしょうがないと思う。 「馬鹿じゃない!!」 バッと立ち上がって反論してくる女の子に呆れる。 「いいや、馬鹿だね…だってもう少しで死ぬところだったんだぜ?」 はぁ…と溜息をついて見上げる。 「う、いっ良いの!どうせ死ぬつもりだったんだし…」 そう言った瞬間暗い表情になる女の子。 「大体何で死にたいんだよ…普通木と喋ったくらいで死のうとするか?」 俺はそれまで疑問に思ってた事を思い切って尋ねてみた。 「確かにそれが原因ではないけど…きっかけにはなったかな」 じゃあ原因は何なんだ?とは思ったが他人の俺が聞いても良いものか… 「原因はさ、私の家庭事情なんだよね…もし良かったらちょっと聞いてくれる?」 女の子は少しだけ泣きそうな声で俺に尋ねてきた。 勿論断る理由はない。 「でもちゃんと会ったのは初めての俺に話しても良いのか?」 「うん、誰かに聞いてもらえればちょっとは気も晴れると思うし…」 そうか… 「そういう事なら…俺で良いなら話してくれ。」
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