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言葉が伝わらないし、急に言うのも変な話だし、それは認める。でも、一緒にいたい。
なにを言っているのだ。間違いなく本心だったし、偽りたくなかったのは認める。だからと愚直に喋ってしまうとは、些か踏み込み過ぎだ。縦令、言葉が伝わりはしないでも、だったら尚更こんな少女の不信感を募らせる駄弁りを控える方が良いに決まっている。
ほら見ろ、七色の睫毛が跳ね上がって目を点にしている。
「――――……?」
少女の姿は教室から浮き出ていて、決してどの地球上でも浮き彫りになるだろうに、それが何故だか、逆にはんなりと咲く花の様子を彷彿とさせた。夕日が街の影を踏み、鳴りを潜めていた折りにまでになれば、多様な変化を少女は惜しみなく、醸していた。
夕日が完全に影に落ちれば、教室を灯していた鮮やかな朱こそ行方を語れず、電源が断された様で、唐突、教室も暗闇に抱かれた。
明るい場所から暗黒に落下したと錯覚を覚えるまでの、変容に目が慣れて来て、ひっそりした華奢な身体が無月のようでいた。雲の上に隠されても、雲は光を滲ませる、そんな事を俄に思う。
うっ!
目に走った激痛。数歩下がれば、机か椅子かに腰を強打して、よろめいても倒れない為に精一杯、踏ん張った。そうしていると、目の痛みこそが幻で、教室の窓全体が爛々に輝いていた。虹色だろうか、月色だろうか。判断するまでに時間を要して、正体が、窓の外に浮遊する巨大な物体だと知れた。
「――――」
差し伸べられた手に……、少女が後光の中、伸ばした掌に、手を、そっと重ねた。
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