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「よっしゃ行くぞぉっ!!」
男の子は小さな体を大きく使いながら両手をあげる。その勢いよく挙げられた手とは裏腹に、手のひらから赤く染まった楓の葉がゆっくりと落ちていく。
腕を振り上げる過程で落ちた楓の葉も入れれば、相当な数がある。
「見て見てっ!!ほらっ!!」
眺めていると、それらは庭を横切る小川へと吸い込まれていく。
一つ、二つ……………。
次々と水面にのる楓が、小川を一瞬だけ赤く染める。
それを男の子から少しだけ離れたら下流にいる女の子が夢中になって目で追っている。
「天の川みたいだろ~紅葉の川だっ!!」
「すごいすごいっ!!」
女の子はぱぁっと顔を輝かせる。
――……天の川みたいとな、男子のくせに女子のようじゃのぅ。
「くくっ、本当にねぇ~誰に似たんだか」
少し離れた場所で作業服を着込んだ母親らしき人が一人胡座をかきながら「くくく」と笑いを堪える。それに呼応するようにその上に枝を広げる大楓が風に揺れて葉を散らす。
笑い続ける母親に気が付いたのか、男の子は恥ずかしがりながらも咎めるように睨む。
「ねぇっ私もやりたいっ!!」
葉が流れきると、女の子は男の子の方へと駆け出し、そばにあった楓の枝に手を伸ばす。
「あっ!!だめっ!!」
慌てた男の子は女の子を止めようと走り出す。
そして、勢いよくつまづいた結果、女の子にタックルをかます形となった。途端に楓の葉が舞い上がる。
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