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綺麗な一回転をしたのち、座り込んだ二人に特に怪我はなかったようだが、女の子にとっては衝撃的だったらしい。ぱちくりと驚いた顔をしていたが、やがて目に涙を溜め始めた。
「わっ!!泣くなっ!!泣くなってばぁっ!!」
ついに泣き始めた女の子に男の子も泣きそうな顔でおろおろしている。
『ふっ……ふふふっ、ふふっ』
突然堪えるような笑い声が、男の子の耳に入ってくる。近くに聞こえたはずなのに、周りを見てもそれらしき人はいない。
少年は結論を出す。
「お母さん笑ってないでどうにかしてよぉっ!!」
「………うーん」
八つ当たりのように叫ばれた声に母親は苦笑いをしている。
男の子が多少冷静であったのならば、母親が焦った様子で立ち上がろうとしていたことがわかったであろうし、そもそも笑い方が違うことにすぐ気づいただろう。
「……そっか、まだ君には見えないか」
理解したことを噛み締めるように言葉を漏らすとまた何処からか笑い声が響いてくる。
「笑うなってばっ!!」
まだ、母親が笑っていると思っている息子にため息をつくと、歩み寄る。そして女の子の視線までしゃがみこむと頭を撫でてやる。
「美咲ちゃん?どっか痛いの?」
男の子の母親に諭されるように話しかけられて女の子はしゃくりあげながらも首を横に振る。
「じゃぁビックリしたのかなぁ?」
よしよしと頭を撫でてやっていると、母親の脇からいっぱいいっぱいに伸ばされた小さな手が女の子の頭にのせられる。
母親の真似をするように撫でる仕草をすると、男の子は少し涙目で口を開いた。
「ごめんなさい」
わざとじゃないんだ、と男の子は続ける。
「あのね、楓さん一生懸命生きてるんだって。でね、お父さんとお母さんは楓さんが綺麗に長生きできるようにってお手伝いしてるんだぁ」
男の子の言葉の意味がわかるのかわからないのか、女の子は曖昧に頷く。
「だから勝手に取ったらダメなんだ」
「ダメなの?……っ天の川出来ないの?」
えぐえぐと女の子が泣きながら言うと男の子は手を頭から離すと勢いよく首を横に振った。
「『とくべつ』あるから出来るっ!!」
そして男の子は女の子の手を取ると、「こっちっ!!」と引っ張っていく。
母親は「くくっ」と笑うとその場に座り込む。
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