第13章 混沌

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   私は大野さんが好きなんだもの。  いつまでも田宮の事を考えている自分に魅羽は罪悪感を覚えていた。  田宮くんと会った事・・・  私、大野さんの顔見たら言わないでいられるのかな・・・  聞いてほしくて言ってしまうかもしれない。  あまり大野さんに迷惑かけたくないんだけど・・・な?  魅羽の頭の中はいつまでもモヤモヤとしていてスッキリしない。  あ~~っ!!もうっワケわかんなくなってきた・・・  こんな時は・・・  魅羽は携帯を片手に部屋のドアを勢いよく開けた。  階段をトントンと降りはじめると携帯電話の向こうまでその音が聴こえているようで、  「もしかして今階段降りてる?」  と慧にズバリ当てられてしまった。  「すごっ?よくわかったね?」  キッチンに入った魅羽はいつものように砂糖多めのカフェオレを作り始める。  魅羽の母・彩子は夜勤でいないから一階はシーンと静かだ。  「じゃあ俺のコーヒーも淹れてくれる?」  え・・・っ?  なんか今・・・大野さんの声スピーカーみたいに聴こえ・・・  『るんだけど?』と続けようとしたら、魅羽の両脇からスッと出てきた長い腕が腰に回されて一瞬で身動きがとれなくなってしまった。  「え・・・な、何?」  魅羽は一瞬の事でワケがわからず呆然としていると、耳元に生暖かい息が吹きかけられて堪らずピクンと身体を揺らした。  この抱きしめられた甘い感触・・・  魅羽の胸はドキドキと早鐘を打ちはじめる。  「・・・大野さん」  背中越しでもハッキリ分かる。  力強いけど優しく全体をふんわり包み込むような長い腕。  慧がいつもつけている香水が微かに香って、魅羽は嬉しさと安堵感に思わず目を閉じた。  「うん」  聞き慣れた優しい声が耳元に届いて  その一言に魅羽の胸がきゅうっと締めつけられた。  大野さんのナマ声・・・っ  久しぶりに聞くとなんでこんなにキュンってするんだろ?  魅羽はうっすらピンクに染まった頬を慧に気づかれたくないから、すぐに振り向くのを我慢した。
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