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いつの間にかテーブルの上で軽くつながれた手にぎゅっと力が込められて、驚いた魅羽は目を大きく見開いた。
「大野・・・さ・・・」
魅羽の言葉はすぐに慧の柔らかい唇に塞がれて発することなく喉の奥へと飲み込まれる。
「・・・カフェオレの味だ」
「う・・・ん」
キスをした余韻を残したままの会話はお互いの息がかかるほどの距離で、魅羽は心臓の鼓動が慧にも聴こえているんじゃないかと不安になる。
目の前に大野さんが居る。
・・・しかも私の部屋にっ!
金曜日はマナと会うから次に会えるのは土曜日・・・会えると思ってなかったから会えて嬉しいな。
「・・・魅羽ってさ・・・」
「え?」
「ポーカーフェイス上手いよね?」
「『上手い』?」
そんなこと無いと思うけど・・・
「俺になかなかホントの表情見せないよね?・・・ティアの時はもっと素直なのに・・・今だって」
え・・・な・・・に?
「もっと楽になりなよ・・・思ったこと俺にもっと言っていいんだからさ」
私が大野さんに遠慮してるって感じてる・・・のかな?
「それに・・・まだ俺の事名前で呼んでくれないし?」
う・・・気付かれてた・・・!
何も言わないからついつい『大野さん』って言いやすい方で話してたんだけど、とうとうつっこまれちゃったか・・・
「それはっ・・・そのっ・・・まだ慣れてなくて」
だって・・・『慧』って名前で呼ぶなんて馴れ馴れしい感じだし私が言うのもおこがましいような気がして・・・
「・・・プッ!考えすぎ」
「えっ?」
「眉間にシワ出来てるよ?」
うそ~っ!?
慧に言われて魅羽は慌てて額を両手で隠した。
やだ・・・私へんな顔してた!?
「これはっ!大野さんのせいでしょ~っ?」
あ・・・また!
つい『大野さん』を口にして魅羽は「しまった!」という表情になる。
慧はそんな魅羽に気付いていたがその事には触れず、フッと笑った。
「・・・俺達、付き合う前からフレ歴長いよね?」
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