5人が本棚に入れています
本棚に追加
確かに《サイファ》とはオンラインゲームで半年以上の付き合いになる。
「俺、今までけっこう《ティア》のプライベートな話聞いてるから~壁作ってもムダだよ?」
そう言った慧の悪戯っぽく笑う仕草に魅羽は思わず身構える。
「壁?」
「うん。『遠慮』って壁」
「ティアが大学の時にサークルで行った旅行で迷子になったとか、歓迎会でうっかり社長の焼酎飲んで記憶無くしたとか・・・」
- ええ~っ?
私っ、そんな事言った?
「しかもそのまま社長の家に泊まったとか言ってたな・・・よく無事だったね?」
「ウチの社長はいい人だからヘンな事はしないの!それに他の社員も居たし」
「『いい人』ってのが一番危ないんだよ?『油断させていつかは食べてやる』的な?
・・・ちなみに俺も『いい人』だけどw」
「・・・・・・」
それって大野さんも『危ない』って事?・・・でももう食べられちゃったんですけど?
そんな話したなんて私、すっかり忘れてたのに・・・よく覚えてるなあ。
そういえばサイファって1回行った場所でも道順覚えててスイスイ行くし、記憶力いいんだ・・・羨ましい。
「飲むと記憶なくなるのしょっちゅう?」
「ええ?そんなしょっちゅうじゃないよ?」
「この間俺の酒間違えて飲んだとき記憶なくしてたみたいだけど?」
マナ達と飲んだ後、慧のマンションに泊まった時の話だ。
あの時はサイファだから油断したというか・・・
「あれは・・・!」
まさかお酒とは思わなかったし!
「普段は遠慮がちなのに酔うとワガママになって可愛かった」
「・・・!」
『ワガママ』って・・・私酔うとそんなに変わるの?
「あれ俺の前だけにして?」
「え・・・」
「他の人に見せるの嫌だから」
見つめる眼差しは優しいが、真剣な表情で慧は真っ直ぐに魅羽の目を見ていた。
それって・・・
ヤキモチ妬いてくれてる?
そんな事言われたら・・・嬉しすぎる。
最初のコメントを投稿しよう!