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魅羽の目の前に置かれたのは一口サイズの袋に入ったアーモンドチョコレートだった。
「これ・・・」
「疲れた時は甘いモノって言うじゃん?」
「あり・・・がと」
このチョコ、高校のときに私がハマってよく食べてたやつだ。
大人になってからはあまり食べていなかったけど・・・懐かしいな。
魅羽はフフッと自然と笑みをこぼす。
「連絡ないって冷たくない?魅羽ってそんなに冷たい女だったっけ」
・・・はっ!?
思いがけない翔の言葉に魅羽はぽかんと開けた口からはすぐに言葉が出てこない。
「な・・・に言って・・・私っ田宮くんの連絡先知らないし!」
「俺この間渡したけど?」
この間・・・?
魅羽は不可解な表情で少し頭の中を整理してみる。
この間会った時って・・・同窓会の時か会議室で会った時・・・あ・・・
魅羽は何かに気づいたのか今着ているベージュのカーディガンの両脇のポケットの上から手で押さえて確かめてみる。
左のポケットから何かが擦れるようなカサカサとした音がして、魅羽はポケットに左手を突っ込んだ。
ポケットから出てきたのは一枚の名刺。
<田宮翔>と書かれたその名刺には仕事用の携帯番号の下に手書きでもう1つ携帯番号が記されていた。
「いつの間にっ?・・・全然気づかなかった」
このカーディガン、冷房対策用に会社のロッカーに置いていて時々しか使わないから・・・
「せっかくこっちに帰ってきたんだから魅羽の連絡先聴いても良くない?」
「え・・・」
「俺の教えたし」
「『教えて』なんて言ってないし田宮くんが勝手に・・・」
「元クラスメイトだしまた皆で集まるかもしれないし連絡先知ってた方が便利だろ?ただの友達なんだったらそうゆうの気にしないよな?」
「そうよ?ただの元クラスメイトです!」
魅羽が勢いよく断言すると翔はニコニコ笑いながら自分の携帯を出して指差した。
『じゃあ今電話しろよ?』という風に無言で催促されていると察知した魅羽は苦い表情になる。
「・・・解ったわよ・・・着信残せばいいんでしょっ!?」
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