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『……今やこの胸にあるものは――』
復讐。
それに尽きていた。
『真の世界などもうどうでも良い。彼女がいないこの世界に意味など見い出せん……』
虚空に吸い込まれるようにして、零の言葉は消えていく。
まるで、そこにある“黒”が、その言葉に賛同するかのように。
虚空間の静寂は、絶対的なものとして在った。
地上に空気があるように、海中に水があるように、それは至極当然なものとして在った。
だから、零はこの場所を「静かだ」とも思わない。
『……主?』
『――』
ふと声がしたのを聞き、瞑っていた目が開く。
『いかがなされましたか。我でよろしければ、お力添え差し上げますが』
『いや、少し考えに耽っていただけだ。次のゲームの進展についてな』
フォカロルは、おお、と短い声をあげた。
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