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リョーマが寝転がったままの姿勢でチラリと振り返った。
そしてわたしの手にしているものを見て、
あからさまに眉をしかめて言った。
「知紗。俺が『そーゆーの』嫌いだって知ってんだろ。
ここで開けんな。」
そう、リョーマは昔から甘いものが苦手なのだ。
その中でもチョコレートが大っ嫌いで、匂いだけでも嫌がる。
「だって……。
悲しくって一人じゃ食べれないもん。」
そう言ってわたしは睨むリョーマを無視して箱を開ける。
途端、チョコ特有の甘い香りがふわりと漂う。
うん、やっぱおいしそう。
我ながら上出来。
「ね、一個だけ。」
トリュフを一つ摘まんで、リョーマに差し出す。
「いらねって。」
こちらを見ることもなく、
リョーマの心ない一言に、わたしは傷ついた。
まるで、わたしの想いまで拒否されているみたいで。
「バカ………。」
トリュフを摘まんだ指を自分の口へ運ぶと、悔しくて目尻に涙が滲む。
ベッドに座り込んでいるわたしを無視してリョーマは漫画を読んでいる。
だんだんその背中が滲んだ。
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