うつせみ【BL】

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「ちょっと陸!見て!コンビニ!コンビニ出来てる!!」 「はいはいそうだね」 夏。8月。盆真っ最中の今日、俺は無駄に声のでかい母さんと毎年恒例の里帰りの為に、このコンビニすら珍しい田舎に来た。 東京から深夜バスで12時間半という拷問にも近い移動時間と8時前なんていう朝早すぎる到着時刻には何年経っても慣れることが出来ない。前に飛行機で行きたいと懇願した事があるが、「じゃあ差額払ってくれる?」の一言で敢え無く諦めさせられた。 「いやー、あんなとこにコンビニが出来るなんてねえ!前はただの空き地だったのにね、陸も覚えてるでしょ?」 「…母さんさ、あんだけバス乗ったのによく疲れないよね」 「あんたこそもう10回以上乗ってるんだからいい加減慣れなさいよー!それにこの澄んだ空気を吸えば疲れなんて吹き飛ぶでしょ?…ほら、もうすぐ着くから頑張って!」 コンビニを曲がってまっすぐ歩くと、じいちゃん達の家へと続く坂が現れた。重いボストンバッグにバランスを崩しそうになりながら坂を登る。…もうすぐ、着いてしまう。腰が痛い。肩が痛い。腕が痛い。 でも、そんなのちっとも気にならない程に、痛みが強くなり出したのは……
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